自然といい暮らし

vol.3 / Yさま邸 旦那さまにお聞きしました
家の前でほほ笑む男性

住む人、使う人の気持ちになっていた大工職人

梅雨入りする前の5月下旬、この日お邪魔したのは静かな山間にある築4年のWB HOUSE。玄関を開けると、奥さんの周りではしゃぎ回るお子さんたちと、こんがり日焼け肌が似合うご主人が出迎えてくれました。

部屋に招いてもらってそうそう、工建設(以下:工)の代表が当時の思いを口にしました。
「実はこの家、僕が初めて親父(先代)に打ち合わせから図面までを任された家だったんです。図面上でシステムキッチンとキッチンのバック収納との間隔が狭すぎてすごく怒られましたね……。完全に設計不足だったんですが(苦笑)こんなの使いづらいだろうが! と何回怒鳴られたことか……。別の業者さんに励ましの声をかけてもらうぐらいの当時でした」

その様子を施工中の現場で目撃していたというご主人。
「それ、いちばん覚えてる(笑)。怒鳴られてるのを見て、なにか自分も難しい注文してしまったのかなぁって責任を感じてしまったぐらい(笑)」
「いえいえ、全然僕の知識が足りなかっただけです。関係ないのに一緒に凹んでくれたのを僕は覚えています(笑)」

依頼する側とつくる側、お二方の間には思入れ深い出来事が共有されているみたいです。
ご自身の家づくりの最中でのそんな様子に、「大丈夫か?」といった不安はなかったですか? との問いかけに、「それはなかったですね。お客さんの前だからきちんと指導してます的な感じでもなかったし、多分、僕がいなくてもそのや りとりはあったんじゃないかなと思ってました。それだけ真剣に向き合ってくれてて、キッチンひとつでもその場所を使う人 の立場になってくれてるのがわかりました。厳しい言葉が飛び交ってるのを見て現場の凄みはありましたが、それが逆に頼も しさにも感じてましたね」

奥さんもそういった現場のやりとりは知っていたみたいで、この家で起こった当時のエピソードは“今の工建設”につながっている貴重なルーツのようです。

家の写真

そんな刺激的な思い出とは裏腹に、Yさんご一家の住まいは室内から外観まで、落ち着きのある色合いで統一されています。

「ひと言で言えば、目立つようなつくりは避けたかったんです。唯一、工さんとの打ち合わせで僕が意識してたことですかね。WB HOUSEにすることは工さんが言うことだから間違いはないだろうと最初から思ってましたし、そこは安心してたというか、頼りにしてた部分でした。家にいて落ち着いた時間を過ごしたいっていうのが個人的には強くあって、ごちゃごちゃした色の組み合わせにはならないよう考えてました。そんな要望にも、部屋の中や外から見た時の雰囲気を紙面上でシミュレーションして見せてくれたりしたので、イメージもしやすかったですし、思ったように家ができていく感じでしたね。住む側の気持ちを組んでくれてたというか。妻がとくにこだわりがないようであれば僕が要望を言って話を進めていくことが多かったです。でも、妻の意見もちゃんと工さんが聞き出してくれてたので、お風呂場の色は妻の意見が採用されました(笑)」

体感したから、WBでいいと実感した

元々、Yさんご一家と工建設とのお付き合いはそれぞれの親世代からあるものでした。だから自然にWB HOUSEの家づくりを耳にする機会は身近にあったのかもしれません。けれども、はじめからあった信頼にさらなる確信を与えたのは、実際の体験だったと言います。

「前は市内にあるアパートに住んでいたんですが、30代にもなったしそろそろ家を建てようかなと考えはじめ、とりあえず大きめの住宅展示場に気軽に行ったりしてました。でも、“建てるなら地元”というのがあったので、行く前から地元が同じである工さんのことは頭にありました。いろいろやりとりをしていくうちにその考えが強まっていった感じですね。アパート暮らしの時から家の理想は少しあって、カラっとした住み心地がいい生活がしたかったんです。鉄筋コンクリート製の建物では、どうしても梅雨時期や雨の多い日は湿気が凄かったので、心地いい快適さを求めていて。それで工さんに相談したときに『それならこんな家がいい』と提案されたのがWB HOUSEです。自分たちの課題を解決してくれるための工さんの提案ですから、説明を聞いたりもして安心しきってた感はありましたが、同じ工法で建てられた完成見学会がちょうど間近であったので、せっかくだから行ってみたんです」

談笑する親子の写真

「見学会というイベントではあったんですが、実際にWB HOUSEの構造だったり、家の中の空気の流れだったりがその場で見たり触れたりできて、より詳しく話を聞けたりもしたので、『体験会』に近い内容でした。空気の体験カーはいちばんよかったですね。中に入るとWB HOUSEじゃない家との比較がすごい差だなと感じました。アパート暮らしの時に気になってた湿 気や部屋の空気のこもりなんかは体験しなくても体が覚えてますが、それがない空間の体験は説得力が違います。完成見学会 でお邪魔させていただいた施主の方にも、そのあと住み心地の話なんかも直接聞いたりしました。いろいろ調べて肌で体感し ていくうちに、工さんの提案する理由にどんどん納得していったわけです」

立地の良さを活かすWBが、夏の涼しさを

Yさんの家は、海沿いの国道を上がった高台にあたる場所。農業を営むYさんですが、畑はそこを降りた実家のそばに構えています。この日は収穫シーズンが少し落ち着いたタイミングだったとのことですが、日焼け肌がその仕事っぷりを……。そんな環境にあるおかげで、実家とご自身の家とで気温や空気の差を実感する場面が多いとのことです。

「お昼は畑から戻って自分の家の中でご飯を食べてます。その時に思うのが玄関を開けた際の空気のモワッと感がないことで す。実家にいた時は多分あたりまえすぎて感じてなかったことだと思いますが、WB HOUSEを意識するようになって気づいたことですね。家の中の空気の流れを見学会の時に説明してもらってたので、実際に住んでみてその現象が起きていることをあらためて実感します。両親もこの違いは感じてたみたいです。立地的にも風通しがいいからでしょうか、夏の涼しさが人工的なものではなく、自然な涼しさで過ごせています」

光が差し込むカーテン

自然なままに、暖かな生活を

取材の合間では、代表がWB HOUSEに関する新しい情報や知識をYさんご夫妻に丁寧に説明する姿が。そんな光景は、依頼主としては建てる前と後とで、ひょっとしたら興味の持ち方が違ってたりするかもしれません。ですが、双方の間にはこれからこのWB HOUSEと一緒に生活していく生き生きとした表情が見てとれました。

「春頃に薄着のまま出てしまって、やっぱり外はまだ寒かったなんてこと、結構あります。室内で暖房はほとんど焚いてないんですけどね。これもこの家ならではの新鮮な体験ですよね。新鮮と言えばあとひとつ、住みはじめてすぐの頃に子供がいつの間にか壁に落書きをしてたんです(涙)。しかも黒のクレヨンで……。その日の僕は一日中凹んで、夜中にひとりで落書きを消しにかかってました。それからしばらく目を見張ってましたが、いつの間にかまた……(笑)」

落書きを見せてもらった時に「いい感じじゃないですか!」と言ってた代表の声に、奥さんも「私も別にいいと思ってるんです」と。その横でニヤニヤ自慢げにしてる子供二人も、この家を自然なままに楽しんでるようでした。

子供を両手に抱きかかえる男性 ドアにクレヨンで描かれたいたずら書き こどもたちのいたずら
文と写真 河野喬