陽のあたる家

vol.2 / Kさま邸 旦那さまにお聞きしました
男性が笑っている写真

「とにかく『冬あったかい家』ということだけは譲れなかったね」とKさんご夫妻は口を揃えて言います。お二人が住まれるWB HOUSEの家にお邪魔したのは、年も明けて間もない1月中旬。冬空が青く澄み渡ったこの日は、お昼前のやさしい日差しの中に、やわらかな風が流れていました。

あたたかい冬の家

お茶農家を営むご夫妻の繁忙期は、春から秋口にかけて。栽培から出荷まで夫婦二人を中心に行います。だからこそ、今の季節は「ゆったり過ごす休息の時間」のようです。新しく立てたWB HOUSEの家は、茶畑に囲まれた築40年の一軒家を大きく減築し、元の家とつなぎ合わせる形で7年前に建てられました。

「元々の家はすごく広かったんだけど、なんだかその分空気が『冷たく』感じてた。夏はそれでもいいんだけど冬は毎年耐える気持ちで過ごしていたね。台所なんか特に寒くて、食事の時は陽のあたる窓際に移動してご飯を食べたりもしていたよ(笑)。だから、新しく建てるときは絶対に冬の家のことだけはこだわりたかった。そんなことを胸に秘めながら家づくりの話をいろんな人から聞いていて、近くの工さん(工建設:当時は先代が社長。本文中の工さんは先代のこと)のとこにも行ってみるか!と行ってみたのがはじまりだね」

家の写真

Kさんの家から工建設の事務所までは、徒歩圏内。普段から耳にしていた工建設の評判が気になって、日課であった散歩をかねて家の相談をしに行ったようです。

町の工務店に託した夢

「室内の温度のことばかり気にしてたけど、知人が家を建てて、その時『空気がいい』って言ってたのを覚えていた。実際にはよくわからなかったけど、少しだけそのことが気になってたね。そんなタイミングで散歩がてらにはじめて工さんの事務所に行って相談したら、話が盛り上がって(笑)。そこからはもうここにしようと。場所も近いからなにかあった時は絶対いいだろうし、安心感があった。キレイな仕事をするってよく耳にしていたのもあって“やっぱりここがいい”と自然に決まっていった感じだったね。空気のことも熱心に教えてくれて。なによりも、人柄がよかった」

笑いながら話す男性の写真

新しく家を建てる際、「あれを○○したい」「これを○○したい」という理想は誰にでも間違いなく芽生えるもの。Kさんご夫妻の場合は、理想というより「絶対」な気持ちが過去の体験から身にしみてあったようです。そんな願いを工建設に託す一方で、もう一つ、強い願いがあったと言います。

「クロス張りの壁にはしたくなくて、板張りがよかった。化学的な繊維にはなんだか抵抗があって、先々でてきそうなホルムアルデヒドなんかの不安も建てる前からなんとか解決しときたかった。工さんはそれに対して知恵や工夫も教えてくれたりして、一生懸命に向き合ってくれた。工さんはよく“先々のこと”を考えていたね。やっぱりここからまた新しい暮らしがはじまるわけだから、家の将来のことは『今考えとかないと』っていう話をよくしていたよ。空気のことはもちろんだけど、それ以外の細かな構造の部分や感覚的なところが私たちとマッチしていたんだと思う」

団欒するリビングも廊下も部屋も、壁面にはかなりの数の木材が使われています。この日、一緒に話を聞いていた現代表(以下:代表)も思わず「この数...作業も大変だったはず」と見入ります。「大変だろうなぁ」と思いながら大工職人さんたちの壁を張る作業を見ていたというご主人は、「も?黙々と作業するのよ(笑)。工さんはとにかく段取りをピシャッとやってたね。次から次に材料を運んで来てて抜かりのない感じがした」。それを聞いた代表は「現場での段取りの早さはいいんだけど、あまりにも早く材料を現場に持ってくるから、場所が狭くなるとよって、よく大工さんが僕にこっそり嘆いてました(笑)」と先代の裏話を。職人世界のほっこりする意外なエピソードがこぼれました。

陽が当たる家の中の写真

日差しを暖房にかえたWB HOUSE

家が完成したのは12月。冬が本格的にはじまる時期に新しい生活はスタートしました。

「びっくりするぐらいに生活が激変したよ。まず、暖房が要らなくなった。寝る前のあのヒヤリとした布団の冷たさもなくって、夜起きてトイレに行くのも苦じゃなくなった。当時は、家を建てる前での打ち合わせでWB HOUSEのことを実際に体験できたりする機会もそんなになくて、工さんが空気の流れを説明する『模型』を持ってきて、熱心に説明してくれてた。だから実際に体感した時はほんとうに驚いたね。夏は夏でムワっと感がないのもいいんだよね。元の家の夏場の天井裏を開けたことがあったんだけど、熱気がぶわーっと下へ降りてくる。WBはそれが全然ない。隣の家との差がすごくて、行けばすぐわかる」

元からある家を減築してWB HOUSEの家をつなげたこの家は、室内の温度の差が一目瞭然。取材したこの日も、すぐ隣の元の家に全員で数回足を踏み入れてみましたが、たしかに、一瞬で感じるものが。こんなモデルハウスがあったら...。

時計の下を歩く男性の写真

二人の暮らしに陽だまりをくれた、工建設

リビングに張り巡らされた木のぬくもりに浸っていると、「その時計いいでしょ?工さんからのプレゼントだったよ。木の壁だからどうぞって」とご主人が時計を指差して、満足そうな笑みを浮かべ教えてくれました。代表もこのことは知らなかったみたいで、斬新なデザインと先代の気前の良さに感心しています。一枚板にシンプルに飾られた穏和な振り子は、ちゃんとこの家の一部として時を刻んでいるようです。

「コンセントだけはもっとあってもよかったかも。今は二人で住んでるけど、三人の娘が帰って来た時は『充電』でコンセントが足りなくなります...」と奥さんからポツリ。もちろん、普段は苦にならないコンセントの数ですが、時代とともに変化していく「便利さ」は、こういった小さな日常の場面にも影響を与えています。それでも、工建設が手がけたこの家には、電源の要らない「自然な豊かさ」が息づいているようです。

「勝手口が欲しくてつくってもらったんですけど、本当に勝手が良くて(笑)。玄関はちゃんと別にあるんですけど、そっちより使ってます」と陽のあたる勝手口に案内してくれた奥さんの表情には、うれしさが溢れていました。

茶農園の写真 勝手口の写真 犬の置物の写真
文と写真 河野喬